top of page

つり目写真はNG?!今話題の「文化的感受性」スキルを培う


*バタバタしていましたが、久びさの更新。シンガポールに再び引っ越しました*

最近、何かと話題の“Cultural Sensitivity(文化的感受性)”

例をあげればキリがありません。2018年9月日本で開催の『女子バレー選手権』でセルビア代表チームが、日本人の特徴を示した“つり目”ポーズの写真を投稿して、世界中から“Culturally insensitive(文化的配慮が足りない)”と(特に日本人以外から)大ひんしゅくを買い、謝罪したニュースが話題になりました。海外で、アジア人の細い目を真似ることは、身体的特徴をネガティブに揶揄しているとして差別的な意味に捉えられているからです。また、アメリカ雑誌『Vogue』での芸者写真への批判など、昨今似たようなニュースが増えてきたように思いますが、それだけ、多様性に伴い「文化の違いを認め合おうよ、尊重しようよ!」という配慮の風潮が広まってきたのでしょう。昔は、こんなこと、ありませんでしたよね!

特に、多民族国家かつハブ的機能のあるドバイ、マレーシア、そして現在のシンガポールのような国に住むと、いろいろな国・文化的背景の方と出会います。そんな中から、昨今の状況を踏まえ“国際人”になる力を培うのに、一つとても重要なスキルだと感じたことを紹介します。

それは、”Cultural Sensitiveness(文化的感受性)”

意味は、文化的差異や共通性に気づき、バイアスがかかった(偏見を持った)価値観で見ない(ポジティブ・ネガティブ、どちらかがよくどちらかが悪い、正しいか間違っているかという見方をしない)こと。これ、かなり難しいスキルです。

“Cultural Sensitiveness”の例を挙げます。シンプルな例だと、フランス出身の黒人と出会い、「フランス人なのに黒人なの?」と思うこと(アフリカ系フランス人がたくさんいる)。親がメキシコ人なのに、アメリカ人だという人に会い「アメリカ人じゃないよね?」と言うこと。(アメリカ人=白人と思っている人がいますが、ラテン系アメリカ人もたくさんいる)。また「中南米人はみんなサルサがうまいんでしょ?」というのも、偏見。ペルー、エクアドル、ボリビアの方々はそのように言うと恥ずかしそうに「ラテン人にも、踊りが下手なシャイなひともいるんだよ!」と言うことしばし。

逆に日本人の例だと、「日本人は、みんな着物を自分で着られるんでしょう?」「日本人は、家で奥さんが夕食でお寿司を握っているんでしょう?」と筆者は頻繁に外国人に聞かれますが、これもバイアスがかかったステレオタイプの例。

単一民族の日本で暮らした日本人は、多民族国家の人々より、この “差異への気づき“という感覚に慣れていないのではないでしょうか。海外生活経験が浅い方や海外在住でも日本人コミュニティ中心に生活していると、上記のような体験で、びっくりする方もみられます。でも、ルーツとアイデンティティが同じでない方と、海外に出るとたくさん出会うことになるのです。背景が大きく異なる人々に囲まれた暮らしをしていると“今まで常識だと思っていたこと大きく違う”体験をすることが多くなります。それにより、差異を認識し、お互いを認め合うようになる、これは国際人にとても重要なスキルで、どんどん鍛えた方が良いと、筆者は思います。

つい最近、ちょうどこんなことがありました。

友人になった中南米の方が、筆者との写真をSNSに投稿。悪気なく、新しい日本人の友達ができた!と喜んで投稿していて、微笑ましく思いました。ところが、その方の友人からのコメントに、「あなた、目どうしちゃったの?!その中国人と同じになってしまっている、ははははは!笑」とあったので、驚いてしまいました。(注意:中南米のスペイン語では、一般的に中国人を表すスラングは差別的に捉えられ、また日本・中国含む東アジア人いっしょくたに、中国人と呼んでいます。)

いや、「確かに美女大国の中南米に比べたら、そりゃ目は細いですよ……。でも、公共の場で、昨今これだけ文化的感受性について慎重な風潮で、それを言う?!」と少し悲しくなってしまいました。ただ、筆者としてはこの事例を学術的に追求し理解することで発見があるかもしれない、と思い、いろいろ調べる中でやはり発見があったのでご紹介します。

Intercultural communications(インターカルチュラル コミュニケーション) 教授のDr. Milton J. Bennett(ミルトン・ベネット氏)による、有名な“文化的感受性の発達ステージ”について。異文化への感受性は、基本的に下記の1→5の順番で発達していくという理論です。5の段階になるまでにはそれぞれのステージで時には何年もかかり、異文化経験を多く積むことによって5まで到達できるとか。

“Developmental Model of Intercultural Sensitivity (DMIS)”

1.Denial (否定):

自国文化が唯一のもので全て、多文化は認めない、否定的な見方をする

2. Defense, Reversal  (二極化):

どちらかの文化が優れていて、どちらがが、劣っているという見方をする

3. Minimization (最小化):

結局どこの国の文化も同じだよねと思う

4. Acceptance (受容):

自分の文化が、複雑な外の世界で行われている様々な価値観のうちの一つだと認識、受容すること。他国文化と自国文化の違いを認識し、かつ人間として公平だと考えること

5. Adoption (承認、自分のものとして取り入れる):

多文化の概念や行動が尊敬・尊重すべきものであり、その文化の中にあっては適切であるとわかり、自分の思考を相手の文化への思考にスイッチし、理解・承認できる状態になること。

異文化ギャップを感じる時や傷つけられた、あれ?ちょっとおかしい?と感じる時は、双方の文化的感受性のステージが異なる場合に、起きやすいのではないでしょうか。そして段階が大きく違う人同士で、理解しあうことはなかなか難しいことと想像します。なぜなら、経験の積み重ねによってのみ、次のステージに上がっていくからです。理想は、4以上の段階に到達すること。4以上の人が増えたら、文化的衝突が減るのではないかと思いました。

Cultural Insensitive(文化的に配慮が足りない)事例を経験して嫌な思いをした場合は、それをきっかけに文化的感受性の重要さや、それが自分にはどのように伝わっているか、相手に話してみることは、もしかしたら偏見への気づきになり、双方にとってプラスになるかもしれません。筆者は、そのようにアプローチするようにしています。

それでも伝わらなければ、感情的になるよりも「あぁ、あの人は文化的感受性ステージが1なのかもしれないなぁ〜。仕方ない。」と客観的に見て、さらっと流すのが良いでしょう。

筆者は一応海外在住5カ国、多国籍の方々と働き、客観的に自分を見て”4”の段階かなぁと思います。このような経験をどんどん積んで、“5”を目指したい!と思います。

みなさんは、異文化ギャップを経験したら、どのように対応していますか?

・参考:

http://helenfagan.com/developing-cultural-sensitivity-and-competence/

Developing Cultural Sensitivity and Competence, Helen Fagan

Featured Posts
Recent Posts
Archive
Search By Tags
Follow Us
  • Facebook - Black Circle
  • Twitter - Black Circle
bottom of page